お寺から東南の方向に東漸寺の山林があり、古道を15分ほど登ったところが、奥の院、岩問山(いわとさん)です。和銅年間(708年)に行基菩薩により開かれたと伝えられ、佐世保での霊山としてはもっとも古い時代のものとなります。寛和2年(986年)、この岩問山の薬師如来を現在の場所に移し、東漸寺が開創されます。
落ち葉を踏みしめながらの岩問の道は、千三百年の時を経ています。現在の奥の院薬師堂は昭和62年に改築されました。石仏の薬師如来座像をおまつりしています。ここから、さらに30メートルほど進むと、奥の院跡奥屋敷です。
明治39年、夜中に岩問さまの方から、ものすごい音がしました。夜が明けて、みんなで登ってみると、巨大な岩の崩落で、お堂は見る影もありません。しかし奇跡的なことに、お薬師さまはお堂から転がり出して、道にお座りになっており、無事だったと伝えられます。
木立を分け入り、お堂跡の岩壁を見ると、薬師経が刻まれています。天保10年(1839年)4月8日、東漸寺第二十四世法印観公代に、草刈彌平、工助が願主となりお堂を再建し、台座を新調したことが記してあります。
これまで、数え切れない多くの方が、喜びにつけ悲しみにつけ、岩問さまを拝むために、この道を通ったことでしょう。行きなさいと言われるわけではなく、だれかが待っているのでもありません。当然ですが、お茶がいただけることもなく、何かが売ってあるわけでもありません。ただ、1300年の時を経て、ひっそりと多くの人の手により、拝むことだけが目的で守り伝えられてきました。
それが信仰の原点であるはずですし、東漸寺の基本姿勢です。毎月8日の朝、お寺を出て、お参りをしております。