苦しいこと

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 悪いことばかりおこって、何かのたたりなのでしょうか?と聞かれることがあります。悪いこととは、つまり「苦」という状態です。人はなぜ苦を感じるのか?答えは簡単で、生きていることそのものが「苦」であると、お釈迦さまは説かれます。


 たとえば、おいしい食物をいただいた瞬間は「楽」と感じますが、永遠に食べ続けると「苦」に転じます。本堂で正座をすると気持ちが引きしまってよいですが、30分後には足がしびれて苦痛に変わります。もしも、「苦」を感じなければ、胃袋が張りさけるまで食べ続けたり、膝が変形しても座りつづけることになります。
 
 苦を感じることは、生きている証であり、命をつないでいくための大切な感覚なのです。「楽」とは苦しみが消える一瞬の感覚で、持続して感じるものではありません。だから、みんながあこがれる「楽」は、少なく感じてしまうのです。
 
 「苦」を避けようとする心は、生きていることそのものを、否定することにつながります。働かずして財をなそうと考えたり、クスリを使って快楽を求めたり、楽しみだけの人付き合いをしたりと、「楽」だけを求めることは、その人の生命をおびやかす行為となります。
 
 生きている限り「苦」が続くというと、気分が悪くなりそうですが、「苦」のおかげで生きていると感じることが出来れば、「楽」を得やすくなります。病気になるのは嫌なものですが、そのおかげで身体全体を休めるきっかけとなります。人から嫌なことをされるのは苦痛ですが、そのおかげで、人の苦しみを理解し、自分が成長するきっかけとなります。
 
 「苦」が少し減った瞬間を楽しむというコツをつかめば、生きることが自由になります。楽しいばかりの人生は、ありえません。もし、そう感じる人がいれば、まわりからみれば、浅はかな生き方です。
 
 新年や立春の節目には、仏さまの前でお祈りをし、自心を深くみつめることで、人生はより充実したものとなります。