武器

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 残念なことに、戦争が身近な出来事として感じられるようになってきました。


 お釈迦さまの時代、古代インドでも争いは絶えなかったようです。現在のように大量破壊兵器はなかったでしょうが、自在に敵を倒すための道具として、様々な武器が作られました。
 
 さて、仏教のシンボルとして、法輪(ほうりん)というものがあります。ほとけさまの教えが他に転じ伝わるのを輪にたとえたものですが、実はこの形、古代インドの王様が持っていた円盤形の武器なのです。
 
 武器の強さは仏教に取り込まれ、迷いを打ち破り、正しい道へと導く象徴として、飾られるようになったのです。ダイアモンドよりも硬いといわれる金剛の名を冠して、金剛杵と総じて呼ばれます。きっと、古代の人々は、武器をほとけさまの持ち物としてしまうことで、力づくで武器を取り上げることなく、平和の道を模索したのでしょう。
 
 真言宗では、本堂の中心に大壇(だいだん)を構えます。ほとけさまの教えを、様々な道具を使い示したもので、本堂全体で表現する曼荼羅世界の根本となるものです。この壇上に、金剛杵を安置します。先の形状により、独鈷・三鈷・五鈷杵、また輪寶・羯磨といわれるものなどがあり、それぞれが、ほとけさまの教えを形として示したものです。輪寶は、ほとけさまの教えが煩悩をうち破り、迷いが生じないよう守護する鎮護の意味合いをこめて用います。羯磨は、ほとけさまの智慧の象徴であり、四隅に置き結界をするのです。
 
 私たちは智慧をもって強く生きていかなければなりません。武器を持つことでの強さは儚いもので、人を危める道具として使われることがないよう、願ってやみません。