道は自ずから弘まらず弘まることかならず人による(弘法大師)

 昨年、印象に残ったニュースの一つに、スペースシャトルの映像があります。まるで映画の世界のような場面が生中継されました。最先端の技術を結集した宇宙の出来事は、人工衛星を手でつかんで回収するという、意外にも人間味あふれるものでした。まさに今、人の文明が創生されようとしている宇宙では、生身の人間の手が一番信頼できるのでしょう。

 

 自動車で百キロのスピードで走ることは、もはや当たり前の世の中です。その当たり前を実現した高度成長期といわれる時代のひずみが、さまざまな形で回ってきているように感じます。いかに人の手をわずらわせることなく暮らすかが、競われている現代で、人が人らしい行いをしなかったときに、思わ 事故が起き、公害が出ます。

 

 人の心を大事にしない教育は、荒れた心の子供が育ちます。法事や葬式ですら、業者まかせにすれば、施主は何もしなくても事足ります。ですが、形だけの儀式にとどまり、実を考えない家庭に安心は訪れません。

 

 崩れはじめている様々な状況を正していくのは、わたしたち自身です。調和のとれた世の中を作っていくのは、ほんのちょっとした心づかいの積み重ねです。道は、必ず人の力によって、広まっていきます。