赤ちゃんがおいでになる

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画僧牧宥恵さまから描いていただいたお薬師さま


1995年というと、パワーブック5300csというラップトップ(とはいえ厚みは6センチほどありましたが)を持ってウキウキしていた頃。初めての子どもに恵まれた年です。


「赤ちゃんがおいでになりましたか、おめでとうございました」と、年配の方々から祝福を受けました。

作るとかできちゃったとかではなく「おいでになる」という表現を教えてくれた当時のお婆ちゃまたち。子育てが進むごとに、その言葉はずっと頭の片隅にありました。


出産に関してお経には次のようなくだりがあります。


或有女人臨當産時受於極苦。若能至心稱名禮讃恭敬供養彼如來者。衆苦皆除。所生之子身分具足。形色端正見者歡喜。利根聰明安隱少病無有非人奪其精氣。

(薬師瑠璃光如来本願功徳経 玄奘訳)

ざっくり訳してみると、

女性は出産にあたってはとっても苦しいのですが、よくよく心を込めて仏さまの名を唱え拝むと、苦しみはすべて除かれ、生まれくる子どもは身体は健全で端正、みんなが喜びにつつまれます。

聡明で穏やかで病も少なく、悪いものから生きる力が奪われてしまうことはありません、との内容です。


人と人が向かい合っていると、どうにも解決できないことがでてきます。互いが見つめ合う時期も良いことですが、ずっと一緒にいる人と同じ方を向いていることは大切に思います。幸せを目に見えるカタチとしたのが、仏さまを拝むという行為です。ひとりひとりの「おいでになった」者たちは、それぞれの人格があります。幸せになろうという目標を共有して、生き抜く智恵をお経は伝えます。

お薬師さまのお経

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2015年にお薬師さまは大修理を行いました。700年の間には、廃寺になったこともありますし、防空壕の中で腐れてしまったこともあり、さまざまな困難を超えて今に伝わっています。

 

1500年ほど昔のインドで薬師経というお経ができて、チベットや中国、さらに日本へと伝わりました。サンスクリット語経典も発見されていますし、漢訳は西遊記のお話で有名な玄奘三蔵が訳したものも伝わっています。

 

病との向き合い方として、手を洗い歯を磨き、洗い清めた服を着て清潔にすること。
そして、穢れなく怒りのない心を保ち、心安らかに、互いに人の幸せを祈り、平等の心を起こしなさいと説きます。


心の拠り所として、薬師如来の像をまつり、日中も眠っている時も薬師如来の名を呼び供養を行うことを説きます。


病人と向き合うのに7日間に渡って殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒をせずに、過剰な食事をとらない、趣味に走らない、贅沢な座具で休まないなどという、大切な人を看護するには必然とも言えることを守り生活をすること。さらには14日、21日、35日、49日と継続していくことを推奨しています。

 

それでも、長い人生の中で病が消えることはありません。ですから、人に言われて向き合っていることではないし、責任の所在を言うものでもありません。ましてや、戦い続けていくようなものではなく、生き続けていくかぎりずっと共存していくものであることを諭します。

 

 

玄奘三蔵訳の薬師瑠璃光如来本願功徳経から写経です。
般若心経の半分くらいの文字数にしていますので、なぞり書きで挑戦してみてください。

書き下し文です。

仏、曼殊室利に告げて、かくのごとし、かくのごとし、汝が説くところのごとし。曼殊室利よ、もし浄信の善男子・善女人等あって、かの世尊薬師瑠璃光如来を供養せんと欲せば、まさに先ず彼の仏の形像を造立し、清浄の座を敷いてこれを安処すべし。種々の花を散じ、種々の香を焼き、種々の幢幡をもって、その処を荘厳し、七日七夜、八分斎戒を受持し、清浄の食を食し、澡浴香潔し、新浄の衣を着て、まさに垢濁無き心、怒害無き心を生じて、一切有情において利益安楽・慈悲喜捨・平等の心を起こすべし。

 

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お巡(めぐ)りをお考えのみなさまへ

 

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ご本尊薬師如来ご真言

おんころころせんだりまとうぎそわか

(壁紙サイズにしておりますので、握り仏としてください)


 東漸寺は九州88ケ所霊場74番札所に指定されています。九州一円を巡り、本堂にあがって拝める霊場として親しまれています。

 霊場巡りは各県をまたいで巡錫(じゅんしゃく)する修行です。派生したご朱印集めも併せて、大変心苦しいのですが、感染症拡大にともない、当山としては、これをおすすめするわけにはいきません。

 もちろん、不安な時であるからこそ、ご本尊薬師如来さまを大切におまつりをしており、ご参拝になられた場合は、安心してお参りいただけるように、環境は整えております。

 しかし、私たちがこの社会を守っていくために、一人ひとりが広範囲に移動をしないことを守る責任があります。

 同行二人(どうぎょうににん)とは、お大師さまが常に一緒にいらっしゃるとの意味です。巡礼者にお大師さまを重ね見て、有り難いと感じるからこそお接待があります。

 1200年の時を超え、国家の安穏を願い続けるお大師さまです。私たちのこの数年間は自由にならないかもしれませんが、お大師さまならば、何をなされるかを深く考え、同行二人本来の姿で生き抜いていきましょう。

 

 

 なぞり書きの写経用紙をアップしています。お家でプリントしやすいようにA4サイズにしています。ちょっと小さいかなと思いますが、ペンなどでなぞり書きでお楽しみくださいませ。

 

 

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九州88ケ所霊場会からのお知らせはこちら

http://www.kyushyu88.com/index.php/page-57/#post-1640

花まつり 誕生会

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花御堂のお釈迦さまを拝みます


4月12日 花御堂にお釈迦さまをおまつりしています。甘茶はありませんので、手を合わせて拝んでいただきたいです。


本年は、時間を決めて法要は行いません。

状況を踏まえて、お祈りをしておきたい方は、お参りください。

 

赤ちゃんの健康と子育成就をお祈りするお加持会は、個別に時間を決めますので、お電話ください。

花にちなんで

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ご本尊 薬師如来が持つ薬壺(やくこ)  薬を与え病を除き、苦しみを癒やし、寿命を延ばそうと願うお姿です。ご真言は「おんころころせんだりまとうぎそわか」苦しみの時、繰り返しお唱えください。

 

 先が見えない毎日となりました。恐れを抱くことは、身を守るうえで大切です。危険と思われることをなるべく少なくする努力が必要です。

 お寺のお薬師さまは、千年の歴史の中で、私たちのご先祖の喜びと悲しみを、ずっと見守ってきました。その長い年月と比べるならば、月日の予定が立たないことは瞬間のことなのかもしれません。この春の花を楽しむことができなかったとしても、一生すべてが台無しになったわけではありません。ただ、少しばかり先の長い坂道を、歩んでいかなかればならないようです。花にちなんだお釈迦さまの言葉があります。

 

 他人の間違いを見ない。他人のした

 ことと、しなかったことを見ない。

 ただ、自分のしたことと、しなかった

 こととだけは、しっかりと見るべき。

 

 うるわしく、あでやかに咲く花でも、

 香りの無いものがあるように、

 善く説かれたことばでも、

 それを実行しない人には実りがない。

 

 うるわしく、あでやかに咲く花で、

 しかも香りあるものがあるように、

 善く説かれたことばも、それを実行

 する人には、実りがある。

 

 うず高く花を集めて多くの花飾りを

 つくるように、人として生まれ

 またいつかは死ぬ定めがあるならば、

 多くの善いことをなせ。

 

 花の香りは風に逆らっては

 進んで行かない。

 しかし徳のある人々の香りは、

 風に逆らっても進んで行く。

 徳のある人はすべての方向に薫る。

 徳行ある人々の香りは最上であって、

 天の神々にもとどく。

 

 徳行を完成し、つとめはげんで生活し、

 正しい智慧によって心安らかな人は、

 悪いものが近づくことはない。

 

手を洗うことで危険が遠のくように、心も洗うことで安心を得ます。共にいたわりあう心を得るには、今までの「ものさし」とは違う長さで考え、行動することです。お経を唱え、写経を行い、心を見つめ、世界平和を願い、先祖を尊び、互いの健康を祈り続けましょう。

お檀家のみなさまへ

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 弘仁9(818)年、都で疫病が流行し、嵯峨天皇弘法大師空海のすすめで般若心経を写経され、苦しむ人々の平癒を祈りました。この故事にあやかり、お檀家の皆さまに写経用紙をお届けしました。お楽しみいただき、ご利益があることを願っております。

 

 さて、寺行事は集まらずに、拝むことができるように変更しております。ご本尊さまにお祈りし、ご先祖を大切にする心が、お互いを思う心につながると信じております。しかしながら、寺参りは状況に応じて、無理をなさらずに、気持ちが良いと感じる時になさってください。東漸寺ではお位牌堂に毎朝お霊膳をお供えし、供養を続けておりますので、どうぞご安心ください。

 

 年忌について、本堂での法要はしっかりと行いますが、他人を含む大人数のお斎(食事)は見合わせるべきと思っております。先日、遠方の家族が移動できずお参りできないと悲しんでおられました。離れていても、家族と心を共にして手を合わせられます。ご希望でしたら、どこからでもお勤めに参加できるようライブ配信もいたします。できる限りの行いで、ご先祖へお気持ちを伝えましょう。

 葬儀の参列者が発症したという報道がありました。例えば、通夜は住職と身内だけで早めにお勤めをして、みなさんには随時と案内しておけば、各自お別れしてお帰りいただけます。葬儀の本質は弘法大師から伝わる引導の儀式と読経を住職が行うことです。参列者の皆さまは、危険を作って密閉した空間に居続けなくとも、心を込めて焼香をすれば良いでしょう。

 

 祭壇や見栄え、飲食に工面するのではなく、家庭の雰囲気に合った供養の本来の意味をとりもどす機会だと感じています。不安なことがありましたら、お寺にご相談ください。

 

 戦争が迫りくる頃、作家の広津和郎は、「どんなことがあってもめげずに、忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず、生き通して行く」と説きました。この言葉のひとつひとつを大切にして、この困難な世の中を歩んでいきましょう。 合掌

 

          東漸寺 住職 奥島正就