特別展「伝えるチカラ〜修復された仏像」

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瑠璃光の楠葉に漏(も)るる岩問山 大悲の誓い照りて隈(くま)なし

 

 お寺の境内は、長崎県天然記念物に指定されております楠の木の青葉が芽吹きはじめ、まもなくアオバズクもやってきて翠緑が冴える頃となります。

 

 仏典には、自性清淨(じしょうしょうじょう)離垢清浄(りくしょうじょう)という考え方があります。

 

 人はもともと清らかなものとして生まれておりますが、長い間の苦しみや悲しみに心がくもり、知るも知らぬも塵が降りつもり、生きる力を見失うことがあります。

 ちょうど雨にうたれた木々が生き生きと冴えわたるように、私の心も洗いながすことで、光りを増すものとなります。このことを日々よく心に観じることで、煩悩という垢から離れ清浄を得る力が生まれます。

 

 生きていることは、自分が思う通りにはなりませんし、苦しいと感じることがたくさんあります。この便利で恵まれた現代でもそう感じるのですから、戦国の世での自然や人間の世界は、想像もできないほどの厳しさであっただろうと推察します。

 

 700年前に、この薬師如来は刻まれました。名前の通り病気平癒を祈る仏として、大きくは国を守る祈りを行う仏として守られてきました。そのほのかな笑みに、どれだけの方が救われてきたでしょうか。

 

 仏さまの姿とは、自分自身の本来的な優しさ、清らかさを目覚めさせ、観じさせるものなのです。

 

 文化財はすべての方の共有財産です。先人が伝えたものを活かすのも、無にしてしまうのも、今を生きる私たちの生き方にかかっています。この展示を通して、ご理解を深めていただければ有難いです。

 

 歴史と文化を感じていただくことが、お寺の願いでもあります。今回の特別展に合わせ、学び(僧侶・仏師・学芸員・古文書研究家のリレー講座)、遊び(魔鏡づくりワークショップ)、修行(写経体験講座)、祝い(稚児行列)を企画しておりますので、ぜひご参加下さい。

 

 平成の世に佐世保市指定文化財として修復ができましたことを、佐世保市教育委員会をはじめとする関係各位、そして市民のみなさまに深く御礼申し上げます。どうぞ、特別展「伝えるチカラ~修復された仏像」を、ごゆっくりお楽しみください。

 

期間:2015年4月15日(水曜日)10時から2015年4月26日(日曜日)18時まで

 

場所:佐世保市博物館島瀬美術センター4階

 

内容:東漸寺ご本尊薬師如来立像をはじめ、お寺に伝わる50点の仏像、古文書などを展示します。

 

 イベント


1.講座
(1)4月18日(土曜日)午後1時30分~
「相浦谷に鎮座する東漸寺」奥島正就(東漸寺 住職)


(2)4月18日(土曜日)午後2時30分~
「東漸寺に残る古文書 奥島家文書について」山口俊幸(佐世保古文書解読研究会)


(3)4月25日(土曜日)午後1時30分~
「佐世保地方の仏像について」竹下正博(佐賀県立美術館 学芸員)


(4)4月25日(土曜日)午後2時30分~
「仏像修理の基礎講座」浦叡学(浦仏刻所 仏師)

 

2.魔鏡づくり
4月19日(日曜日)午後1時30分~(当日先着順50名限定)

銅板に自由に絵を書いてエッチング、サンドペーパーやコンパウンドで磨きこんで鏡を作ります。根気良く行うと、魔鏡効果が!

 

3.写経体験(日時は会場に掲示をします)

薬師如来にまつわる短いお経を写経をします。

 

4.稚児行列(四ヶ町アーケード)
4月19日(日曜日)午前11時~11時40分

きらびやかな平安調の衣装を身につけた稚児91名の行列です。子どもたちのすこやかな成長を本尊さまの前でお祈りをします。

 

平成27年度特別展「伝えるチカラ~修復された仏像」/佐世保市役所