諸行無常

 諸行無常、または無常という言葉は生活の中で、耳にする事があります。これは仏さまの言葉で、万物は常に変転してやむことがない、すなわち、作られたものは移り行くということなのです。

 椿の花がポトリと落ちたり、紅葉が、はらはらと散るさまに無常を感じる人は多いと思います。しかし、このように寂しい思いだけが無常というわけではありません。春を迎え、枯れ木のようになった桜が、見事に満開の花を咲かすのも、仏さまの言葉である諸行は無常だからなのです。

 つまり、散りゆく秋があるから、萌え出ずる春があるのでしょう。もちろん、その反対もあるわけですが、消え行くものがあって、新しい命の芽生えがあるのだと思います。人間も例外ではありません。いつかは終焉の時が来るわけです。それはこの世に生まれたものの宿命であります。そうであるなら、何はともあれ、価値ある生き方を求め、安らぎの心を持って、幸せな人生を送ろうではありませんか。そう説いているのが、仏さまなのです。

 仏さまは、幸せな人生を送るための道理と行事を、こと細かく説いておられます。この事を仏道、仏事と言うのです。

 仏事を、即、亡き人の行事と思いこんでいる人がいるのではないでしょうか?日晴、七五三、結婚式、厄入など、すべての人生の儀式を仏式で行う時に、それらはすべて仏事と呼ばれます。人生の最後の行事である葬儀を仏式でおこなえば、仏事を行じているのです。それは、冥土へ行った亡き人の幸福、即ち冥福を祈り、安らぎを願う、残された者のための行事となります。日晴の時に、生まれてきた赤ん坊の、無事成長を一心に祈るのは親であり祖父母であります。葬儀の時に、亡くなった方の安らぎを一心に願うのは遺族であり、また縁ある人々です。

 行事が誰が誰のために行っているのかを正確にとらえ、迷いなき行事にすることで、豊かな人生を過ごさねばなりません。