しあわせ

 どんな人でも、単独で暮らしているのではなく、常に人と人の関係の中で生きているのが、私たち「人間」です。宗教や文化も違う国と国がお付き合いしていくためには、条約が必要なように、人間同士の関係を正常に保つためには、ルールが必要です。その場の感覚や感情だけで動いてしまうと、知らないうちに他者を不幸にしてしまうものです。お釈迦さまのような人・・・常に相手の心をすくいとれる、自立の出来る人・・・ならばルールを決めなくても、素晴らしい関係を保つことが出来るでしょうか?そんなことはありません、お釈迦さまは、苦労をしてルールを守る実践の結果、相手の心を救えるようになられました。

 
 生きとし生けるものを尊重し、それぞれと良い関係を築くための古来からのルール、それが仏教のいう「戒」といわれるものです。身近なお経本には、不殺生 不偸盗 不邪淫(身体で出来る行いで、いのちの尊さを考え、足ることを知り、不信や憎悪のないようつとめること)不妄語 不綺語 不悪口 不両舌(言葉に関することで、真実を語り、見えすいたお世辞などを並べず、そしり合うことなく、和をかき乱すようなことを言わないこと) 不慳貪 不瞋恚 不邪見(心のあり方を示すもので、憎しみや怒りを越えて平和を保ち、しっかりと自分を見すえること)の十善戒が説かれます。よく見ると、当たり前のことしか求められていません。私たちが幸福に安心して暮らしていくためには、これらの戒を実践していく必要があります。

 さらに、仏さまの教えに慈・悲・喜・捨の四つの心があります。慈とは、あらゆるものに友情の心をもち、楽を与えること、悲は苦を抜くこと、そして、そのような姿を喜び、私が相手のためにしてあげたという傲慢な心を捨ててしまうことです。喜ぶことは、とても難しいものです。自分の喜びは簡単ですが、他人の喜びは嫉妬や憎しみと紙一重です。してもらったことは忘れますが、してあげたことはいつまでも覚えているものです。これらの四つの心を限りなく考えることで、真の幸福を感じとりたいものです。